1月15日
朝七時半ころ目を覚ます。来たばかりのころはそれなりに早く起きていたが、七時をすぎないと明るくならないのでここ最近はゆっくり起きるようになった。
朝の挨拶を済ませて、注意しながら裏庭を抜ける。わざと足をドンドン踏みつけながら庭を、そしてあぜ道を歩く。
昨日聞いた話だとこのあたりはコブラが出るらしい。
なんでも近くの家でタンスを空けたら中に待機していたそうな。田んぼが近いのでそこにいるカエルを食べに行くらしい。
高橋さんの家はしっかり網戸が備えてあるので家の中に入ってくることはないが、庭とあぜ道は別である。以前、家の壁の端からしっぽが出ていたため、飼っている猫を持ってきて捕まえさせようとそうだ。ねずみだろうと思ったらしい。そしたらその尻尾はコブラのもので高橋さん夫妻、そして猫ともども逃げたという。
出るのはコブラだけではない、サソリも出るそうだ。だから靴を履くときはいちいち裏返してブンブン降ってから履くようになった。
そういえば以前長期休暇を使ってタイに遊びに来たとき、バンコクのカオサン通りというバックパッカー(リュックを背負って旅をする人)御用達の場所で尻尾をちぎられたサソリの唐揚げが売っていた。獲れるものしか売り物にならないんだから、つまりサソリは結構その辺にいるということなのかもしれない。ちなみに怖いもの知りたさで食べるとエビと同じ味がした、こういってはなんだがたしかにエビっぽい外見ではある。
加えて巨大なムカデもいるみたいだ。大きいものは30cmにもなるという。ムカデは見た目もあれだが、あごの力が強い上に毒も持っている。高橋さんは就寝中に脇を噛まれ、数日腫れっぱなしだったという。
そんな場所にあるので警戒するに越したことはない。山の眺めがあまりにも見事なのでそちらに目を奪われがちだが、マジでやばいやつは足元に潜んでいる。
庭を抜けてあぜ道を歩く。
今日もチェンダオ山が雄々しい。
絶妙なアングルである。馬蹄形のこの山が単独峰に見えるのはここからしかないということは日記に書いたが、この田んぼもすばらしい位置にある。
チェンダオの地域でこれほど田んぼが集中しているのはここしかない。日本人なら水田は見慣れているが、ヨーロッパ人は田んぼが身近にないので、庭から見えるヤシの木もあいまって、すばらしい異国情緒を感じることができるだろう。もう少しして水入れの時期になると逆さのチェンダオ山が見える。年に数回しかない真っ赤な夕焼けが重なると、言葉では言い表せないほどの絶景らしい。住んでる人だから見える光景だなー。
今日はそのチェンダオ山に登る入山手続きを行う。
聞いた話で記憶もあいまいだがタイには国立公園のほかに自然動植物管理地域みたいな扱いの場所がある。日本なら国立公園が保護としては一番しっかりしているが、タイでは自然動植物管理地域のほうが扱いが上。入山制限もついていて一日150人までしか許可されていない。そして登山者はそこにいくために地元のガイドかポーター(荷物を持って運んでくれる人)を雇わなくてはいけない。
車を走らせて管理局を目指す。チェンダオがタイ国内で有名なのはチェンダオケーブという洞窟らしいが、正直洞窟にはあんまり興味がない。観光客が多くいるチェンダオケーブを通り越して管理局に到着した。
高橋さんは10回ほど登っている常連だが、ここ5年ほど登っていないらしい。そこまで行くともう外国人というよりはタイ人なので「一人で登ってもいいよ」と言われたことがあるんだとか。ちなみにタイで登山はスーパーマイナースポーツ。今の流行はサイクリングらしく、街中や郊外で結構いい自転車に乗っている人を見かける。
4WDじゃないと登れないのでは?と思うような坂道を超えて管理局に到着した。事務局にはデスクがいくつかあったがそこで作業をしているのは二人だけだった。
その一人の太った浅黒い女性が高橋さんと話を始める。
どうやら以前からお世話になった人らしい、顔見知りがいるのなら早く終わりそうだ。
入山料自体は200バーツくらいでそれほど高いものではない。ただ、ガイドもしくはポーターの報酬が一日500バーツ、一日で帰るのはあまりにももったいないから宿泊をおすすめするが、宿泊すると2日分のお金が必要になるといわれた。こういうときは一緒に登る人がいると割り勘で安くあがるが、高橋さんはあまり運動していないことを奥さんに心配されて登ることができない。登りたいなら全額を一人で負担する必要がある。
さらにそこに移動費が加算される。チェンダオ山の登山口は二つ存在する。なだらかでアプローチが長いものと急坂でアプローチが短いもの。前者の場所へは片道1200バーツ、後者の場所へは600バーツかかるらしい。
登山もだが、そもそも写真が撮りたいので行きと帰りの景色が違うと楽しい。登山をするにも関わらず、矛盾しているが登りはつらくないのが望ましい。つまり往路はなだからなアプローチの登山口、帰りは急坂で短いアプローチの登山口に決めた。
自分で登りたいと言っておいてなんだが、今日・明日すぐにでも登りたいというわけではない。準備もしたいので19,20日の二日に決めた。事務所には英語ができる人もいたが、やはり高橋さんがタイ語で交渉した方が早い。お世話になりっぱなしですいません。
昼手前くらいにそのミッションが終わり、今日の午後は温泉に行くことになっていた。チェンダオ土管温泉といえば知る人ぞ知る温泉らしく、高橋さん曰く泉質がタイにある硫黄泉としてはかなり良質だという。
はじめて聞いた時に「土管?」と思ったが、来てみて納得。
たしかにまごうことなき土管である。
この温泉の駆け出しはなんと高橋さんらしい。ここはもともとカレン族という少数民族がよく水浴びをする場所。話を聞いてみると温泉が湧いているということだったので、土管を持ってきて温泉を引いたらしい。
そこから地元のお金持ちが、金を出すからもっと増やしてくれ、ということで設置していき、現在の数になったそうだ。そういったいきさつでこの温泉は無料であり、地元の人の憩いの場に成長した。作ってもう10年になるらしいが、高橋さんは久しぶりに来たという。
ここで日本の諸兄にタイの温泉マナーを知らせておきたい。タイの温泉に入るとき、水着着用が必須ある。まぁ、混浴だから当たり前なんだが・・・そして日本人としてやりがちな着替えの時にすっぽんぽんになる行為。これもご法度で、見つかれば警察沙汰になるそうだ。タイのセブンイレブンでブッダの漫画を立ち読みしたが、幼い仏陀の一物も完全に隠されていた。そういうところの意識がここタイでは高いのかもしれない。かといって、モラルが高いわけでもない。そもそも、お風呂じゃなくてシャワー主流のこの国では温泉の入り方が一般常識として浸透していない。水着ではなく服ごと入ってそのまま服を洗ったり、サンダルを履いたまま湯船につかったり、浴槽の中でシャンプーをするつわものもいるらしい。
まぁ、そんなところだけど温泉の泉質はたしかにいい。肌がツルツルになるというか、日本でいう美人の湯というやつかもしれない。温泉の温度も土管ごとに違っていて、熱いものからぬるいものまでゴミが浮いていたりすることに目を瞑れば選び放題である。加えてこの温泉は川の脇にある河原温泉で、熱くなったら清流の水浴びができるというロケーション、現地に住んでいたら毎日来てしまうだろう。
湯に浸かってダラダラする、最高の気分だ。あまりにも気持ちいため高橋さんは午前中来ないことにしているそうだ、何もやる気がわかなくなるんだとか。
タイのこと、ツーリングのこと、登山のこと。話題は尽きず、充実した時間が過ぎていく。そんなところへ錫杖のような音が聞こえる。その方向を見ていると、林の中から浸かっている土管温泉くらいありそうな水牛がノシノシと歩いてきた。車の中にカメラを置いてきたのが悔やまれるなー。
そんな海外温泉特有のイベントを楽しんだあとお宅へ戻る。
出口にはドラム缶でできたゴミ箱があった。さすがサンリオのエース、仕事を選ばない。
チェンダオ山に登るまではまだ三日ほど時間がある。購入したバイクはタイ国内を自由に走ることができるので、明日から練習の意味を兼ねて泊りでツーリングにいこうと思う。
それでは!
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