1月13日
早朝、日本と比べれば暖かいもののそれでも気温は十数度。日中に三十度近くまで上がり、夜になるとまた急激に冷える、寒暖の差が激しい。
今いるチェンダオはタイの首都バンコクから約800kmの距離にあるタイ北部の街である。
昨夜宿泊した高橋さんのお宅を陽が登ってから改めて見るととてもめっちゃ広い・・・吹き抜けということもあってすさまじい解放感が屋内にある。なんなら屋内でバドミントンができる。
二階のベランダからは田園風景の先にチェンダオ山がそびえる絶景のロケーションだ。この山が日本の山であまり見ない形で、とてもとても気になったので登ることにしたのは後日の話。
リビングに下りて奥さんのドゥアンさんに挨拶した。ドゥアンさんはタイ人で日本に十年住んでいたことから日本語も流暢だ。ちなみにドゥアンはタイ語でお月さまという意味らしい、素敵な名前である。世間話を少しして高橋さんが庭にいることを知る。
靴を履いて緑豊かな庭を進む。ちゃんと手入れもされていて緑が生い茂るというより適度な距離感で配置された印象を受けた。どの植物も日本ではあまり見ないものばかりですでにかなり楽しい。
高橋さんは庭で調理に使う炭を作っていた。肌寒い朝に、この炭火はありがたい。手をかざしながら庭のことや今日の手続きの話をする。
私が高橋さんのことを知ったのはWTNJ(ワールド・ツーリング・ネットワーク・ジャパン)という組織の活動に参加したことがきっかけである。その名前で検索すればすぐにwebページが見つかると思うが、書いて字のごとく、世界をバイクで旅する人たちの組織だ。この組織を私が知った経緯は省くが、私が世界を旅するうえで東南アジアは欠かせないと考えていたおり、そこの関係者から助言をもらった。
「東南アジアは自分のバイクで陸路を越えられないが、この原則に反することなく自分の運転するバイクで陸路を越える方法がある」
その方法はめちゃくちゃザックリいうと現地の人の名義を借りてバイクに乗る、というものだ。これは私が読者の皆さんがわかるように簡単に書いているが、実際にその手続きは非常に面倒だと思われる。実際に私がお願いした感じだと、かなりの手間と根気と時間を要するし、おそらく長年その地で暮らした経験値によるテクニックもふんだんにある。
まだ一週間ほどしか経っていないタイでの海外ツーリングは言ってしまえば
メチャクチャ楽しい。完全に面白い。
日本でのツーリングがすでに楽しい人には東南アジアの海外ツーリングを満喫する適性があると思う、きっとハマってしまう。
これが私個人の今の感想なのです。だからこそ、ここで安易に「手続きしてもらえれば越境できる!」とかいかにも簡単に見える風に書いて、そのまま言葉の表面だけ掬って捉える人がいると、お世話になった高橋さんに迷惑がかかるから念を押して言います。
手続等はかなりのご負担をおかけすることになります。
想像してみてください。自分が普段の生活の中、海外在住の日本人から「日本に帰るからそのとき乗るバイクの手続きやっといてよ!」と言われたときの大変さ。その書類が全部英語だったら鼻血が出そうですよね。お前も無理を承知でお世話になってるんだろう!と思う人もいるかもしれない。たしかにその通りです。だからこのことを私自身が忘れないようにしようと思います。
で、その手続きについて炭火を囲いながら作戦を立てました。今日のミッションはチェンダオの街にあるバイク屋さんに行って、旅に使うバイクを実際に選ぶことです。
・・・ハイ、着きました。町のバイク屋。三分クッキングみたいですが、やっぱり短距離とはいえ海外の道を走るのは感慨深いものがあります。値段交渉はやはり現地の人のほうが強いということで、高橋さんだけではなく奥さんのドゥアンさんも一緒に来てくれました。
どれでも乗って試していいよ!高橋さんが躊躇する私に激励を送ります。自身もバイクに乗りながら、キックでエンジンがかかりにくいものやサスペンションの状態を確認してくれています。
タイのバイク屋さんってかなり大きいです。チェンダオは都会ではないですが、それでも日本にあるバイク屋よりも品数は多いです(質はお察しください)。
タイって言ったらそりゃもうバイク国家で老いも若きも好き放題バイクに乗ってますからね。ヘルメットの着用義務があるにもかかわらずノーヘルの人ばっかりで、警察に捕まってもめげずにそのまま乗ってるみたいです。そのノーヘルに対する情熱はなんなのかと思いますが、逆に集中力が高まるのかもしれません。暑いだけだとも思いますが。
タイのバイクは日本のバイクに比べて排気量が小さいものが主流です。50ccもあるんでしょうが、中古のものだと110ccが多数に125ccが僅か。スクータータイプが多く、SS(スーパースポーツ)もどきやネイキッドもどきは数えるほどしかない印象でした。
とにもかくにも道の悪い東南アジア周遊には耐久力が第一なので、そこは信頼のホンダ製です。エンジン以外は極端な話、壊れたら換えれば済む話なので言ってしまえばホンダのエンジンを買うためにそれを載せたバイクを選ぶ作業です。
値段はおおよそ110ccで32000バーツ。125ccは37000バーツだったかな、こっちはあんまり自信ないです(走行距離は8000km~11000km)。高橋さんによれば15ccの差は実感するほど大きく、とくに巡航速度や急坂を登るときに、その恩恵はとても大きいそうな。うーん、とはいえ、ブレーキングシステムがちっちゃいままだったら90km出してる状態から急停車するのは難しいだろうからな・・・そこまでの速度は必要ない気もする。それに急坂を登るなんてそんなにないだろうしなぁ(←あとで後悔する)。まぁ、球数も多い110ccのWAVE(タイカブ)でいいだろ!ってすぐに決めました。
問題はどのWAVEにするか。ちょうどよく赤、黒、青の三つがあった。
赤:見た目はフツー。走行距離8000km。タイヤ溝はもうないがそれは取り替えてもらえるらしい。ブレーキが全然効かないので却下。
黒:見た目はフツー。走行距離10000km。タイヤ溝は同じくないが交換してもらえるのでOK。こっちはブレーキちゃんと効く。お寺のシールが貼ってある、交通安全祈願だろう。
青:見た目はフツー。走行距離8000km。タイヤ溝はないが(略。ブレーキもOK。こっちはお坊さんのシール。
黒か青か・・・デザインの問題なのかなー・・・乗った感じはそんなに変わりません。どっちにしようと悩んでいるとドゥアンさんがなにやら店員さんと話をしています。そしてどうやら黒のバイクは未成年の男の子が、青のバイクはおばちゃんが乗っていたらしいことがわかりました。
現地パワーすげー!
未成年はきっとチョロQみたいな乗り方してたに違いない。だったらマイルドな運転だったであろうおばちゃんのほうを選ぶ方が先が長い。
ということで青い方のWAVEを購入。タイ語で値切ってくれて31000バーツで買うことができました、本当にありがたい。
買ったら即、タイヤを交換してもらう。それもサービスとしてやってもらえることになった。一体いくら浮いたんだ・・・
出てきたバイクは前タイヤのみ交換済みで後ろはそのまま。1mmもない溝で自転車のタイヤのようだが、この国ではどうやら普通らしい。当然ながら日本以上の安全運転が必要なようだ。
バイクを購入してすぐその日にツーリング。高橋さんおすすめルート、少数民族の村が連立する場所へレッツゴー!道路から見える山がとても荒々しい。日本でいうと寒霞渓に近い気もするが、あそこまで茶色も入ってなかったかな。まぁ、私が言いたいのは最高に気持ちがいいルートだってことですよ。
土埃がもうもうと上がる道をバイクでで進み少数民族の村に到着。短い距離で多数の少数民族(顔は一緒だけど衣装や住居、話す言葉が全然違う)を見ることができるので、観光客が多く来る場所のようだ。道の脇で停まるとブレスレットを大量に持った女性に囲まれた。
うーん・・・まったくいらない。ちょっとだけ、ほんのちょっとだけ欲しい、とかそういうのは本当に一切ない。これは完全にいらない。
高橋さんが必死にタイ語で「買わない」ことを伝えるが全く意に介さない。向こうだって生活がかかってるんだ!とかそういう必死さじゃなく、ただ「No」と言われ慣れてるので右から左に流している印象だ。
そうだ、写真撮らせてもらってお金を渡そう。それでWIN-WINだ。一人につき20バーツ渡す。
カラフルな装飾が印象的だが、表情がすごくよかったので白黒で撮影。カラーも撮ったけどそれは気が向いたら載せます。
三人いた女性を一人ずつ撮らせてもらう。写真を撮るようになって感じることが多いが、やっぱり心の距離は表情に出る。そういった距離の詰め方もプロのノウハウなんだろうが、正直そんなのは持ち合わせていない、相手タイ語だし。そういうときは、複数の人を一人ずつ撮る。できれば若い女性グループがいい。彼女たちを一人ずつ撮ろうとすると、撮られていないほかのメンバーが被写体の一人を茶化したりする。その時、一瞬だけカメラを向けている間の堅い表情が抜ける。だからクールとかビューティフルとかヒュー!とかこっちから「笑われそうなネタ」を振るといい写真が撮れる確率が上がる気がする。ああ、これがノウハウか。結婚式場のカメラマンとかもなんか小ネタ持ってるもんなー。
単体でいい表情をきちっと作れるのは訓練された人間です、仕事人。そういう人はグラビアアイドルだけじゃなくてコスプレして写真に撮られ慣れてる人にもいるのでそういった人の魅力を借りて、写真を撮影すると練習になる気がします。光とかフォーカスとかボケ量とか勉強になります。
ハッ!ツーリングの途中だった。
三人娘の写真を撮って次の村へ向かう。集落の道にはところどころ半円状のコンクリートがせりあがっていて、スピードが出せない。水道管ですぎだろ!と思ってましたが、あとで知ったところによると村人が車輌に轢かれないための減速装置でした。完全に目的を果たしてましたね。なめてました、すいません。
陽の光の黄色が強くではじめたころ、ようやく最後の村に到着。民族が変わると数キロ離れていないのに高床式住居を使っていたり、謎のアルファベットが書いてあったり、どれも新鮮なものばかりだった。ただ驚いたのは、そのどれもがこの場所に広がる自然に対して、とても調和しているということ。広い面積の葉や大きく開いた赤い花が咲く赤茶色の道には、意匠が細かい家よりもある程度おおざっぱで暑い日中を快適に過ごせそうな家が似合うよな。似合うってのはたぶん納得いくってことなんだろうなー。
タイをバイクで走った初日。最後に見た道の先には何があるんだろうなー。
最高でした、高橋さんありがとうございます。
今日はバイクを購入しただけなので明日近郊の都市チェンライの陸運局で名義変更の手続きを行う予定です。
それでは!
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