みなさん、こんにちは。
まさかリスタートしてからの日記の題名がいきなりこんなことになってしまうとは・・
何気ない日々も過ごしてましたがエピソード別に書いていくことにしたので、とりあえずここから書いていきます。
この日はペルーのワラスに滞在して三日目だった。
ここワラスはリマから400kmほど北上した場所で、標高が3000mを超える。町の規模は山岳地域にも関わらず大きいもので、フォルクスワーゲンのディーラーもあるほどだ。この近郊にはワスカラン国立公園という雄大な山々を囲う美しい自然公園があり、トレッキングの名所として名高い。ハイシーズンは乾季且つ気温も高い6-8月だが、雨季にさしかかる10月でもトレッカーが絶えることはない。
前述のように標高が3000mを超える町、そして場所によっては4500mにも達するトレッキングルートから高山病を防ぐ高度順応が欠かせない。私も初日は軽い頭痛があったが、二日もすると息は切れやすいながら普通に行動できるようになり、三日目にしてトレッキングをしようとしていた。
トレッキングルートは日帰りのものから十日に近いものまでいくつものルートが存在する。その中でも青く美しい湖と険しい山のコントラストが有名なラグナ69(単独日帰り)、そしてトレッキング素人でも楽しめるサンタクルス谷のトレッキング(ツアー3泊4日)に決めた。ただラグナ69は4500mの標高まで登らなければならず、サンタクルスのほうはそれほど高くないため、後者を楽しんでからより高度の高いラグナ69を目指す気でいた。
ところがサンタクルス谷のトレッキングツアーは希望の日に無理だということが判明。実はこの日、南米サッカーのワールドカップ予選でペルーの大切な試合があったのだ。日本でも熱烈なファンを見かけるが、ここ南米は国を挙げてお祭り騒ぎである。特に今年は30数年ぶりに出場できるか否かの大切な日だ。この日はまさに雌雄を決する最終決戦だったが、この一つ前の試合の時に滞在していた首都のリマでは、試合を家で見たい人で交通網があふれ、普段の帰宅渋滞が半日前倒しになったほどだ。その日、宿から出発する折に、対戦相手のアルゼンチンのチームカラーである青い服は着るな、と言われたほどである(ペルーが試合に負けたら八つ当たりで襲われる可能性があるため)。
日程にもそれほど余裕があるわけでもないため、結局予定を変更して、先に単独で行けるラグナ69を訪れることにした。目的地まではおよそ2時間。朝の五時四十分ごろ、支度を整えて宿を出発する。高地で朝は寒くエンジンはかかりにくいが、それでもキビキビと走る。そもそも半年間駐車場に放置した状態だったのに(バッテリーのグランドケーブルは外してあった)、一発でエンジンがかかったときは、さすが世界のHONDAだと思った。
朝の町は凛と空気が澄んでいて昼のような喧騒はもちろんない。少数のコレクティーボ(乗り合いバス)がビュンビュン狭い道を飛ばしていく。沿道には、タクシーやコレクティーボを待つ人がちらほらといて、こんなに朝早くから仕事に向かう人の多さに感心しながら道を走る。
ペルーの交通事情は右側通行で、道路は幹線道路に限りアスファルトといったところだ。ただ、そのアスファルトにも笑えないほどの深い穴が空いていたりするし、街のあちこちには減速用のアスファルトの丸い山(高さ15cmくらい?)があるので、うかつにスピードは出せない。この日も市内をゆるゆると走っていた。
もう少しでワラスの町を出るというところで、減速用の山を越える。このとき、後ろから来たコレクティーボに横から追い抜かれる。この小さな乗り合いバスは、加速は遅いのに最高速が速いというマリオカートのクッパみたいなやつで、ここで意地を張ってもどうせ後で抜かれるので、道を譲ることにした。
その時、後ろから犬が喚きながら追いかけてくる。飼い犬か野犬か、、、私はとても犬が好きだが、別に犬が私を好きだとは限らないし、実際ウユニ塩湖では荒れ地を低速走行中、野犬に噛まれて狂犬病のワクチンを一週間打ち続ける羽目になった。当たり前だがバイクは犬より加速も最高速も速い。でも、それは目の前の道が空いているときだけだ。
なかなか加速しきらないコレクティーボに車間を詰めてついてく。その時、左からまた犬が飛び出してきた。
あっ!と思うもブレーキが間に合わない。反対車線に車がいたのでとっさに避けることもできず、犬も驚いてその場に止まってしまい、そのまま衝突した。
時速はたぶん50kmいくかいかないかだったと思う。追いかけてきた犬を振り切って安心した矢先だった。鮮明に覚えているが、犬は大型犬に近い中型犬の大きさで、犬の太ももとお腹あたりに衝突した。
ギャン!!という甲高い声とともに自分の視界と地面が近くなり、そのあとはなすすべなく二回ほど回転した。すぐにわかる痛みは左ひじと左ひざの擦り傷だった。
不幸中の幸いだが、車通りはそれほど激しくなく、かつ路傍にいた数人の人たちが私やバイクを安全な場所に速やかに移動してくれた。これは勲章でもなんでもないし、読者の方は「軽く見るな」と思うのは当然だが、今までの無数の転倒から自分の傷が大したことにならないのは転がっているときにわかった。できた傷も擦り傷と肩の軽い打撲くらいだろうか。
ところが犬のほうはそうはいかない。前足は忙しくなく動くのに、下半身は全く動かないようで苦しそうに声を上げていた。周りの人は私とバイクの心配をすごくしてくれたが、バイクはあとで見ることにして、今は路肩に残ったまま悶える犬を動かさなければとその時は思った。一応道路から出ているもののこちらは道路をはみ出して走行することも少なくないし、今は朝だが夜になれば本当に目立たず危ない。
「危ないから犬を動かしたい」とつたないスペイン語で伝えると「噛みつかれるかもしれない、あいつはもうだめだからやめなさい」と初老の男性。本当にかわいそうなことをしたし、けれどあの様子だとこの先、生きていくのは難しいと直感させる様子だった。結局数分して動かなくなるまでその場で様子を見ることしかできなかった。一緒に育ってきた家族か兄弟か、ほかにも路傍にいた数匹の犬たちが遠巻きにその犬を見ていたのがいたたまれなかった。本当にごめん。
【事故後の対応】
(衝突した犬)
非難はもちろんあると思うが、犬は結局放置した。おじさんに犬はどうしたらいい?と聞いたら、聞き取れた中では「できることはない」だった。けれど今思えば自分可愛さで何もせずというところが正しいかもしれない。現に首輪がないのを確認して安堵した自分に引け目を感じた。言葉にすれば簡単だが本当にすまないことした。
(バイク)
損傷した個所は左ミラー、左のライトのズレ、荷物固定用の治具のズレ、クラッチの曲がり。クラッチの曲がりはすぐに曲げなおして修正、ほかのことに関しては後日修理予定。
(体)
左肘と左膝に3cm大の擦り傷。その場で、水で洗って放置。その日の夜に左肩にわずかな鈍痛を感じるが軽い打撲だと認識して放置。
(カメラ)
バックパックのカメラは転倒時に直接地面と接触したわけではないが、転がったときに地面に何度か衝突している。今確認している症状はレンズのFA31mmのフードのガタつき、(前もあったのでおそらく同じ症状だが)メカニカルギアの破損による焦点距離調整不備。
(保障に関して)
今回の旅に関しては3カ月以内に帰国予定なので楽天カードの旅行傷害保険に保障のお願いをする予定。特に高額の機材を使用する予定の人は事前にどういった条件で保険が下りるか調べておくことをお勧めする。特に自走車両を使用する人は国際免許の更新を忘れずに。たまに国際免許は期限が切れていても走れるし(現地の警察にとってはそれ自体を知らない人も多く、形だけ見せれば免許証の提示などの問題はクリアできる)、そもそも持ってないという人もいる。
たしかに何か事があっても「外国人」という理由で面倒を回避したがる人は多いし、頼み込むことで本来必要な処理を大幅に飛ばせることがあることは私も知っている。でも、結局自分ができることは抜かりなくやっていったほうがいい。たとえ誰が見なくても、ルールを守ることは結局自分を守ることに繋がる。今回の保障に関しても期限が切れた国際免許では適用できなかっただろう。(私がやった)トラブルシューティングに関してはまた別項目で詳しく記載しようと思う。
今日はお休みととってバイクを修理したりしてますが、曲げたパーツを曲げなおす度に、あの犬の前足だけバタつかせてキャンキャン言う様子が頭から離れません。これがもし人間の子供だったら・・・昨日は疲れてたけど全然眠れませんでした。
ちなみにクソ野郎と思われるかもしれませんが、事故のあと、そのままラグナ69に行ってきました。
この写真を見る度、今回のことを戒めにして忘れないようにしていこうと思います。
大きな変更なければ明日からサンタクルス谷のトレッキングに行ってきます。
数日ブログが空きますが、また読んでいただけると嬉しいです。
それでは、また。
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いきなりとんだハプニングだったね、長いこと旅してればいろんなことがあるね。
これからも怪我に気をつけてより慎重に頑張って。
勝本さん、コメントありがとうございます。長い旅は本当にいろんなことが起こりますね。
お気遣いありがとうございます、いい土産話ができるように頑張ります^^