
みなさん、こんにちは。
今日は先日の準備編の続きを書こうと思います。
ドンキーに荷物を積んで出発するまでの時間、周りと話しながら徐々にお互い打ち解けていく。
と、いってもそれほどガッツリ話せるわけでもなく、今までどこに行って、これからどこに行くつもりなのか?という旅人同士のありふれた会話だ。でも、こういうのは旅人同士にとってマナーみたいなものだ。
日常生活の中の小さな約束事の集まりが常識であるように、出身地や言葉、目的地が違えど旅人の常識を守れば、本当に誰とでも仲良くなれる。
我々のガイドはペルー人の女性で褐色の肌に三つ編みの女性、名前はマルガリータ。英語をそつなく話し、ヨーロピアンたちも「ガイドが英語綺麗に喋れてラッキー」と言っていた。
ガイドは私の名前をなかなか憶えなかったが、こっちはピザと関連付けたからすぐに覚えた。ジャパニーズは親切で好きって言ってたけど、リップサービスかどうかはさておき、マルガリータに以前接した日本人に感謝だ。
大げさな言い方かもしれないが、海外の人から見れば旅行者はその国のちょっとした代表みたいなものだ。もちろん陽気なロシア人もいれば陰湿なコロンビア人もいるだろうし、コンピューターが得意なインディアンがいても、辛いのがダメなインド人がいてもまるでおかしくない、そんなことはみんなわかってるんだが、人はやっぱりイメージに任せて世界を見るほうが簡単だし安心する。
だから結局○○人は△△だ、みたいなしょーもないところに落ち着く。
これがプラスに転がればいいが、マイナスに転がると・・・海外での自分の行動は次にその場所に来た日本人に影響することを忘れてはならないといつも思う。
ちょっとした代表としての話に関連するが、私は海外で会った人と別れるとき「Nice to meet you」と言われることを目指している。相手にも積極的に「Nice to meet you」と伝えている。
日本の中学校では「はじめまして」という意味で教えられるが、ネイティブと話していると必ずしも最初の挨拶だけではないことに気付く。書いて字のごとく「あなたに会えてよかった」ということだ。
それは相手が会話を楽しんだということで、つまり自分の出会いが相手の幸福に貢献できたという証だ。この言葉が相手から聞けたら、すでに書いた日本人としてちょっとした役割を担えた気がする。
マルガリータとの出会いの一番最初のところを書いただけでこんなに字数が・・・大学の研究室でひたすら「字数を減らしなさい」って先生によく注意されたのになぁ(遠い目)。ここからはもっとざっくり書きますか!
初日は天気もすぐれず、コースもなだらかだったため、会話ばかりのトレッキングになってしまった。でも、人と長く話すというのが私の旅のスタイルからすると新鮮で心地よさもあった。
ただ、やはり団体行動は自由がない、私は写真を撮るのに大切なことが「自分のわがままに付き合ってあげること」だと思っているが、それが大幅に制限されるのがとても歯がゆい。
出会ったばかりの異国の人と、拙い言葉でも、それでも分かり合えるんだという感動と、これから三日のうちに撮りたい写真が撮れるのかという焦りと不安が入りじまった初日だった。
【荷物を運びあげてくれるドンキーとツアー会社の人たち】
【イギリスから来たマイク、空調会社を経営している。ふざけているがめっちゃ健脚で追いつけない】
夜に改めてメンバー同士で自己紹介をしたとき、みんな英語だったが、ちょうど一巡し終わったところでマルガリータが輪に加わった。
スペイン語は碌に話せないが自己紹介くらいならできる、ネイティブに自己紹介するつもりで、スペイン語で話したらマルガリータから「タカーニョ」と呼ばれるようになった。
私自身は「?」となったが周りは変な空気だった。ちなみに深夜に何度か起きてテントの外を見たが、曇っていて星は見えず。明日に期待だ。
【トレッキング初日終了、明日はどんな景色に会えるかな】
【二日目】
いきなりだがこの日はウニオン峠というこのトレッキングの中では最も過酷な難所がある。
大人数のトレッキングは体力に個人差がでやすく、その分、隊列が伸びて結果的に時間がかかるため、六時半ごろには出発になった。
テントを畳み、用意された食事を摂ると、空になった皿をテーブルに残し出発。後片付けはツアー会社のメンバーがしてくれる。こういったところもツアーならではの良さだ。
昨日までは平たんな道だったが、やはり難所に近づくにつれて登りが多くなる。
しかしながら、この峠、大したことない。あれ?難所?というくらいだ。もちろん息は上がるし、しんどいことはしんどいが、高度順応していれば何ら問題はない。
このツアーの前に同じトレッキングを終えた女子大生が「ツアーに参加しなくても全然行けますよ!」と言っていたのを思い出して後悔する。自分のテントくらい自分で持っていけばペルー代表の試合を待つ必要もなく、思うがままに行動できたと思うと悔しい。
新しい友達ができた天秤が、悔しさの乗る天秤よりだいぶ上に上がったころ、メンバーの一人が不調を訴えだした。
彼女の名前はジャンニック、カナダから来た女性でテレビの映像編集の仕事をしているそうだ。
ペースが前日よりも明らかに落ちていたが、やっぱり調子が悪かったようだ。「もう帰りたい」という彼女に励ましの言葉を贈るメンバーもいれば、まるで気にかけないメンバーもいた。
冷ややかな態度にも見えるが、選択と自己責任が一体化しているヨーロピアンからすればわりと自然な対応なのかもしれない。
この次の日、三日目には別のフランス人女性が靴擦れで行動できなくなったが、その時も「靴下でも歩けるさ」みたいな空気になったときにはちょっとビックリした。
別に周りが無理強いしたのではなく彼女が靴を脱いででも歩きたい!といったことに対する賛同の形だが、このあとすぐにみんな出発して(ガイドすら)彼女は一時間以上みんなより遅れてキャンプサイトに到着した。
彼女自身が「できる」って言ったんだから、周りがとやかく言うことではないって感じかな。サッパリしてるよね、私は好きだけど、本当にやばいときは遠慮しちゃだめだなって思いましたね。
【ドイツから親友のルーシーと遊びに来たアンドレア。絶不調の人間もいれば絶好調の人間もいる。団体行動ならでは。】
弱音を吐くジャンニックに「荷物を持とうか?」と言ったが、他の手ぶらに近いメンバーが持つことに。
なんとかジャンニックのやる気が戻ったあと、すぐに再出発。みんなジャンニックを置いてガンガン進んでいく。
一応マルガリータがついてはいたが、見ていてなんか辛そうなので、片言の英語で励ましながら一緒に登ることにした。途中「なんで優しくしてくれるの?」みたいなギャルゲーみたいな質問があったが、私がかっこいい答えを探してる間に「日本人はやさしいんだよ」とマルガリータが答えた。
ちなみにこの時、「タカーニョは撤回してタカって呼ぶよ」と言われました。名前の後ろにニョがつくニックネームは自分勝手なやつって意味があるらしいことを聞きました。
エルニーニョみたいな(ニーニョが男の子だからワンパクとかそういうニュアンスかも)。英語の自己紹介でスペイン語を使うっていう、小さなルールを破ったからか、と確信した。
あの妙な空気はみんなそれを察したんだろうな。
登っていくとみんな峠で待ってくれていた。一番寒いとこで待っててくれるなんて・・・マラソン大会のビリの生徒に温かい拍手が送られるがごとく、我々にもハイタッチのウェルカムが待ってました。まぁビリじゃなくてもみんなやってるんだろうが。
【ウニオン峠の上から来た道を見下ろす、手前だけ登りでその前は平坦】
事前に配られた昼食を摂る、みんな自撮りが大好きで、お互いに写真を撮りあいながら時間を過ごす。
【ユニオン峠から見えるエメラルドグリーンの湖、時折晴れ間が通り過ぎる】
ある程度時間が過ぎても結局晴れ間は見えず、そのままキャンプサイトを目指すことに。
一度峠を登ってしまえばあとは下りばかりで大したことはなかった。夜にはマルガリータから次の日のルート説明があり、選択によっては峠のある二日目より大変な三日目になると言われた。
返答は明日の朝聞くと言われたが、峠があまり大変じゃなかったので、言われたタイミングで大変なほうの選択肢に決めていた。ただ、ここでいうとまたタカーニョに戻ってしまう、ここは我慢だ。
ちなみにこの日も深夜にテントの外を見るが晴れ間は見えず、雨季には一日のうち晴れ間の時間が短いという。オフシーズンで人が少ないのには理由があるなと思いました。
【二日目のキャンプ場から見えるタウリラウ山(Tauliraju)】
【キャンプ場の反対側、草をはむドンキーたち。いっぱい食って明日も頑張ってくれ!】
【三日目】
ここからはこのトレッキングの名前にも使われているサンタクルス谷へ入っていく。
そこでオプションとして湖を見に行くルートを追加できる。ここを入れると一日の移動距離の合計が27kmになるということだった。
ただトーレス・デル・パイネで一日50km歩く羽目になった私からすれば、まるで敵ではない。
13人中10人がこのルートを選択した。前日かなり参っていたジャンニックも多少良くなったが、やはり体力的に厳しいということで写真を頼まれて別れた。
天気も相変わらず優れず、小雨まで降り出していたが、少しでも良くなることを祈って出発。一路湖を目指す。
ここの道もすごく平坦だ。平原を歩く、という表現が合っていると思う。湖の手前だけ少し登りだが、本当に少し。イージーです、思いのほか。
「天気よくなんねーかなー」とみんなで話しているとあっという間に到着。なんか思ってたより短い・・
別れた場所から本当に片道5kmもあんのか?と思う。
少しの間みんなで待ったが天候は一向に変わらず、撤退することに。そうだ、今日はまだ距離がある、あまりグズグズはしていられない。皆、一通り写真を撮って、マルガリータの待つ分岐点を目指す。
【たどり着いたアルフアイコチャ湖(Laguna Arhuaycocha)、天気よかったらたぶん絶景】
来た道を折り返してすぐ、湖の手前を降りたところで、やたらと手を振りながら向かってくる男女がいた。
「おおおおおい!おおおおおい!」
おお!?おおおお!!
少し近づいてからわかったが、このカップル、半年前アルゼンチンのエルチャルテンという場所で偶然出会った日本人だった。
実はこのトレッキングの前、Facebookで「同じ町にいる!」というやりとりをいくらかしたが、結局時間が足りず、やりとり不十分。
わかったのはトレッキングの出発地点が真逆で、この日にちょうどかち合う可能性があった。
しかしながら、私がメインルートから外れるオプションのルートを選んだことで、会える可能性はゼロだと思っていた。まさかそちらもオプションルートを選んでいたとは!奇跡!
もうね、会話が弾む、弾む。みんなには「あとで追いつくから」と伝えて先行してもらう。
今まで英語で伝えられなかった細かいニュアンスも日本語なら言いたいことを100%言える。自分の母国語だから当たり前なんだけど、かゆいところに手が届くっていうか、日本語って使ってて面白いんだよなー。
半年ぶりの再開に早口でしゃべっても全然会話が終わらない。それでも、いくらなんでもそろそろ行かないとまずいとなったので再開を約束してこの場ではお別れ。短時間だったけどめちゃくちゃ楽しかった。
で、この後みんなに追いつくために走りまくりましたね。何十分話してたんだよってくらい離されてて、視界が何度か靄がかかる状態になりながら追いつきました。ファーって感じ。
日本人カップルは私と会う前にマルガリータと話していて再開を確信していたらしいです。
マルガリータは遠くから私が走ってきたのを見ていたみたいで、「日本人は時間を守る努力をする、ナイスガッツ」みたいなことを言っていました。タカーニョから大分出世しましたね。
【戻ってきた分岐点で少しだけ青空が見える、ここからはサンタクルス谷のエリアだ】
この後、フランスから来たアナイスという女性の靴擦れがひどく、靴下一枚で大雨の中を歩いたり、私がこの日一番のご馳走のチョコを落として道端の牛糞と一体化したり、事件はそれなりにありましたが、なんだかんだでキャンプサイトに無事到着。
温かいスープとパンを食べながら、トレッキングと誕生日が重なったメンバーの誕生日を祝ったりして夜が更けていきました。
ただ、キャンプはこの日が最後。明日は街に着いてそのまま帰る予定です。
つまり町から遠く離れたこの場所で星空を撮影する最後のチャンス。着こみに着こんで夜星空を待ちます。
うつらうつらしながら晴れ間を待つ間、この数日のトレッキングを思い返したりしてました。
だんだん雲が薄れ、星空が見えたころには、必ずまたここに来ようと心に決めました。一人で。
【サンタクルス谷から見える夜空、晴れ間を狙ったがそれでも薄雲がところどころ残る】
結論:写真は一人で撮るもんだなぁと改めて感じた。
【四日目】
下りばかり7kmの道。マルガリータからの説明はシンプルだった。
出発の前にメンバーがカンパを募り、良くしてくれた労いとしてチップを渡したこともあってか、昨日まで以上に明るいマルガリータ。
良くしてくれたことに対するこちらの感謝と、自分の努力が満足度に貢献できたと感じるあちらの達成感。チップの文化は正しい心持ちが重なれば社会的にすごくいい習慣だと思う。
【キャンプ場から見える滝。雨季と言えども朝は毎日天気が良く、水しぶきがあれば虹が見える】
出発前、口々にみんな昨夜の写真の出来を聞いてくる。
「仕上がったらもちろん渡すよ」というと喜んでくれる。このトレッキングでみんなと仲良くなれたのは、実は写真によるところがとても大きい。
思い出は心に残すといってカメラを持たない旅人もいるが、心だけでもまたその場所に戻ってこられるように、カメラはおすすめだ。
時・場所・人・光、同じことは二度とない。だから是非カメラを持って出かけてほしい。
出発してすぐ、ここ四日間で一番余裕なルートだと舐めた感じで出発した私はすぐに度肝を抜かれた。
岩肌が露出した狭路にヤギの死体が転がっていたからだ。悲惨な状況は撮りたくないので写真はないが、バイクのヘルメットくらいの大きさの岩に頭を押しつぶされたヤギが道の真ん中に横たわっている。
トレッキング参加者は皆20歳を超えるメンバーで、誰も悲鳴を上げたりはしないが、それでも自然と言葉にならない声が漏れる。
ハエもたかっているのですぐ先ほど起きたというわけではなさそうだが、今我々のいる場所が今も危険ではないかと感じるには十分だった。
みな速足で、時折足を滑らせながら谷を進む。幸いにして心配は杞憂に終わったが、国立公園という性質上、最低限の保護しかされていない公園内は、決して侮るべきではない危険を孕んでいた。
【サンタクルス谷の端っこ、岩肌が大分落ち着いたところで撮影。それでもちょっと怖い】
バスをピックする場所でトレッキング最後の食事を摂りながら、メンバー同士歓談する。
人生でそう何度も来ないこの地に来れた余韻を楽しんだ。
最後にマルガリータにお礼を言ってバスに搭乗。
山岳地帯だけあって窓からの眺めはやはり格別だった。
ワラスの町に着いた後、メンバー同士「Nice to meet you」と言ってからお別れ。
なんだかんだであっという間だったトレッキングは無事終了。
最終日に星空が見えてラッキーだったなぁ。
天気はあまり良くなかったが思うところも思い出も多いトレッキングになってよかった。
【最後みんな大はしゃぎ、I really enjoyed, because of you! Thanks, guys:)】
そしてあらためてタカーニョのほうが写真撮れるって思いましたね、今後ツアーにはなるべく参加しないことを誓います。いや、いろんな人と仲良くなるのはめっちゃ楽しいんだよ!ただ写真撮影には向いてないよね。
【帰りのバスから見た風景。バイクだったら止まって撮れたんだけどなー】
長くなったけど読んでくれてありがとう。
この後入り浸ったワラスの町を出て、首都のリマに戻りました。
次はそん時のことを書けたらいいですね(他人事)
それでは、また。
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